ちよっと気になる話です17
セマダラコガネ成虫の生態及び天敵との関係
―日没から翌朝までのグリーン上の挙動―
潟gモグリーン・ケミカル
三嶋 公明(学術広報室)
大西 一弘(R&Dスタッフ)
1960年代以降、ゴルフ場の開発と共に、それまで農地や畑作地で被害を及ぼしていた害虫、特にコガネムシなどは、彼らにとって、より生息環境の好ましい芝生地に侵入定着し、その個体数も急激に増加してきた。
そういった中でも、特にセマダラコガネは、何故か、近年各地のゴルフ場で被害が急増し、その防除対策が切望されている。
周知の通り、コガネムシは幼虫期において土壌中で生息しているため、農薬の散布もメクラ散布で、しかも有効成分を虫体に到達させることは難しい。従って、必然的に地上部で活動する成虫期の防除が必要となってくるのだが、セマダラコガネ成虫の挙動が判らなかった。
一般的にコガネムシ類成虫の寿命は摂食活動を行わないもので7〜14日間である。そのため、農薬の施用時期が非常に難しく、発生時期を逃すと十分な防除効果が得られないので、成虫期の防除を行うには、まず対象となる害虫の生態を正確に把握する必要がある。
セマダラコガネは年1回の発生で、成虫は6月中旬〜8月末まで出現し、昼間も活動するが、日没後が大多数を占める。しかし、日没後の行動が殆ど明らかにされていないので、ゴルフ場などではその大発生に気づかず、被害の実態を把握するまえに拡がっていったケースが殆どである。
そこで昨年、成虫の日没後の行動を把握するため、ゴルフ場にて夜間調査を行ったので報告する。
調査方法
調査は、三島ゴルフ倶楽部(静岡県駿東郡)の17番コウライグリーン(以下KG:353m
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)で行い、グリーン上に出現したセマダラコガネ成虫を経過時間毎(午後4時30分〜午前7時30分)に全てカウントしていった。
調査結果
●成虫発生数の変化
図1のように日が当っている午後4時30分の段階ではG上では全く成虫を確認する事ができなかったが、午後7時より少しずつ増加していき7時30分には完全にピークに達した。
この時間はほぼ日没時刻と重なっており、日照条件が大きなウェートを占めているものと思われる。ピーク時のG上は成虫で埋め尽くされているような状態で、あまりの凄さに目を疑ってしまうほどである。昼間の状態から劇的に変化する様は一見の価値があり、コース管理関係者には是非見ていただきたいものである。しかし、この大発生は、1〜2時間ほどで終わってしまったので、観察する場合は日没後1時間ぐらいまでがオススメである(ピーク時間以外は本来の発生数ではないので、こんなもんかと勘違いしてしまう)。 また、交尾行動についてもやはり午後7時30分で最も盛んに行なわれ、写真@のようなダンゴ状態のものが多数観察できた。
●グリーン上での観察
午後6時頃から雌成虫が地中から地上部に這い出し始め、性フェロモンを発し、雄成虫がGや周辺のラフ、フェアウエイから飛来してくるのを待ち構えはじめた。午後7時になるとG上で雄成虫が集まり始め、次々と交尾を始めた。交尾を行った後も多数の雌成虫は飛び立つことなく、そのまま地中に潜っていくのが確認できた。
調査期間中、セマダラコガネは、隣接しているBG(距離4.3m)に全く発生しなかった。これは、昨年1年間のGに使用した、殺虫剤の散布回数が原因と思われる(BG:6回、KG:1回)。その前年は、両グリーンとも同じ回数の散布を行っていたので、実質1年間で、これだけG中の成虫密度に差が出る結果となった。
この観察から雌成虫は移動分散するのではなく、KG上で交尾・産卵を繰り返していることが推測される。もし雌成虫が移動分散するのであれば、当然BGにも移動し、その結果、雄成虫も大量に誘引され、大発生する筈であるから、この点からも判断することができた。
写真1:交尾中のセマダラコガネ(1頭の雌に雄が群がっている)
●天敵の存在(捕食性昆虫)
夜間のG上は、おびただしい数のセマダラコガネが発生したが、同時にそれを狙った天敵類も数多く観察された。
ハサミムシやオサムシは成虫の個体数がピークに達する午後7時以降急速に増加し、写真Aのように活発に捕食活動を行っていた。特にハサミムシは、セマダラコガネと同じGの土中から現れるのを数多く観察する事ができ、相当数の成虫が捕食されていた。このような捕食活動は深夜から早朝まで、どの時間帯でも行なわれていた。
写真2:セマダラコガネを捕食中のハサミムシ
●カラスの行動
カラスは、夜明けと共に活動しはじめ、人間の気配が無いと、G上の成虫を生死にかかわらず、一匹残らず全て食べ尽くしてしまった(ハサミムシなど天敵類も同様に)。
コース管理者側から見れば、夜行性の害虫は通常、目にする機会が無い上、更に早朝カラスが掃除屋の役割をしてしまうので、そのGにセマダラコガネがいるのかどうかも判らなくなってしまう。加えて、セマダラコガネは昼間も若干飛んでいるので、昼行性の害虫と勘違いして、昼間の少ない発生数で安心してしまい、防除を行わないコースもあろうかと想定される。
昨今、セマダラコガネが爆発的に増加していった理由は、このような事が主因ではないかと考えられる。
現在、成虫防除には性フェロモントラップなどで発生時期を判断し、薬剤散布を行っているところもあると思われるが、実際に発生時期がつかめても発生場所が確定できなければ、効果的な防除を行うことは困難である。
又、今回のカラスの行動などのように、人間の知らないところで偶然に防除の邪魔をしているケースもまだまだ沢山あるのではと考えられる。
こういった現場での観察を一つ一つ重ねることも害虫防除を行う上では大切なことであり、その害虫の生態や発生している環境条件によって判断していく必要があると考えられる。
(本研究調査に当り、御理解とコースを御提供頂いた三島ゴルフ倶楽部芹沢コース課長様に心から謝意を表します。)
[ゴルフダイジェスト社/ゴルフ場セミナー 平成13年1月号 P164-165]
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